アウー

拳銃が何故恐ろしいのか、それは恐ろしい力を持ちながらも、持ち主に対して無関心かつ忠実だからだ。
例えば、私が弾を込めた拳銃を手に握り、5m先の友人の眉間に銃口を向け、安全装置の解除を確認して引き金を引く。
力強く絞られた引き金は抵抗することなくグリップに寄せられ、それにより拳銃内部の機構がハンマーを薬莢に叩き込み、火薬を爆発させる。その爆発ではじき出された鉛の玉は銃身を通り抜け、一直線に私の友人の眉間に向かって飛んでいく。そして皮膚を頭蓋骨を脳を突き破り、さらに向こうに飛んでいくのだ。
この場面において拳銃は、主人である私に何も意見しないし、抵抗も見せない。そんな事をする拳銃は不良品として扱われることだろう。武器、兵器というものはそういうものだ。
もし、拳銃が上で述べたような事を実際にするとどうなるか。私が弾を込めた拳銃を手に持つ。
「何をする気だ?」
拳銃は私にこう問いかける。意思のある者ならこの段階でこう聞くだろう。
5m先の友人の眉間に銃口を向ける。
「お前は私で友人を殺すのか。何故だ?」
主人は自分(拳銃)で人を殺そうとしているらしい。ごく普通の感性を持っていればこう聞くだろう。
引き金を引く。
「落ち着いて考えろ。どうしてそんな事をしようだなんて思ったか話すんだ」
そう言って拳銃は引き金に力を入れて指を押し返すだろう。
私がその抵抗を振り払い、無理やり引き金を引く。
「お前のその行動は衝動的だ。ここで人を殺したら永遠に悔やむ事になるぞ」
そう言って弾丸はカーブを描いて友人の頬をかすめる。
突然自分の主がその友人を自分を使って撃ち殺そうとしたならば、普通これくらいの抵抗はするだろう。
SFやファンタジーのような例えになったが、拳銃がこのように意思を持って意見を述べ、自分の成り行きに関心を持って場合によっては抵抗する…このよに振舞ったら、それはもはやただの凶器とは違って見えるはずだ。
ところで私は拳銃に対して、「無関心」、「忠実」、「意見しない」、「抵抗を見せない」という表現を使った。これらは普通、人間(や動物)に使う言葉だ。そしてこの拳銃の話そのものも人間に当てはめて考えられる。
拳銃のように恐ろしい力を持ちながらも、主に対して無関心、忠実…意見をせず抵抗もしない。そんな人間が、昔も今も世界中にいる。日本の若者だってそうだ。もしかしたら若者に限らないかもしれない。
人も数が集まれば立派な兵器だ。全員が拳銃のような意思の構えだとしたらそれは恐ろしい事だ。
意思を持って考え意見し、時には抵抗する。これをやめたとき、私たちは自身を凶器へと変えてしまう事になるだろう。

という夢を見た